深まった夜のなかを彷徨うようなムードを打ち出す2ndアルバム ASUNDER『Works Will Come Undone』 ┃アメリカ(オークランド) ┃2ndアルバム ┃ジャンル/デスメタル/フューネラル・ドゥーム ┃リリース/2006年 ┃レーベル/Profound Lore ┃マイスペース/http://www.myspace.com/totheendofdays チェロ担当が脱退し、一応はゲストという形で導入されてはいますが、水面下でサウンドを支えるようなアプローチが多いので、前作のように目立った使われ方は見られなくなりました。おかげで、もともと目立っていた重低音ギターがさらに際立つように。それにともない、悲壮な響きのなかにも、おぼろげな明かりがあった作風から変化。陰鬱なムードが強く漂うようになっている。前作が夕方とするなら本作は深夜といったところ。しかも人里離れた場所。特に雨が降る夜に聴きたくなります。 2曲72分なのですが、2曲目「Rite of Finality」の23分以降はドローンが流れる余韻部分なので、実質は約45分。それでも長いけど。個人的に前作のように余韻部分は曲を分けて欲しかった。iPodに入れるとき幅取るので。 【ピックアップ】02.Rite of Finality ゆったりと鳴らされる冷め切ったギター、憂いをたっぷり含み空気を振るわせるチェロによって、叙述性が徐々に徐々に濃厚になっていく。そこに今にもバラバラに散ってしまいそうな悲痛なギターソロが響く。その後、一転して押し殺すようにへヴィな展開へ。前作を思わせる自然信仰さも持ち合わせている曲。 諦観なスタンスを持ちながら、思わずズルリと感情が表に出てくるのがなんとも言えない。 あと、どうでもいいけどフューネラルドゥームの中でも特にお気に入りの曲だったりする。それこそiPodに入れて持ち歩くくらいに。 ■こんな人にオススメ ・自然が好き ・意欲的なバンドに惹かれる ■主な取り扱い店 ・GRAVE ・はるまげ堂 ・T.H.A. ■この音源に近いアプローチをとるバンド Mournful Congregation、Somnolent PR チェロを取り入れ、夕日に染まった草原に佇むような雰囲気を形作るドゥーム ASUNDER『A Clarion Call』 ┃アメリカ(オークランド) ┃1stアルバム ┃ジャンル/デスメタル/フューネラル・ドゥーム ┃リリース/2004年 ┃レーベル/LIFE IS ABUSE ┃マイスペース/http://www.myspace.com/totheendofdays のどかな農村を想起させる導入からして、他のバンドと雰囲気を異にしていることがわかる。チェロを大胆に取り入れるなど、かなり意欲的。もとより、フューネラルドゥームを演奏をするためというよりも、好きにサウンドを組み立てていったら結果的に近づいてしまったタイプ。 ドラムの手数も多く、重低音ギターがドゥームメタルらしいヘヴィさで、ガツガツした動きをするおかげで、遅いわりには活動的な印象を与える。ときおり顔を出す、情感を搾り出すように響くメロディも対比がとれていて良い。 特筆すべきは、先に書いたとおりチェロの存在。音色そのものの特異性あり、単純に音が増えることによる豊かさのアップあり、大自然の中を佇むような雰囲気作りに貢献ありと、このバンドにかなりのものをもたらしている。 薄暗さはありますが、どうしようもない絶望さはないので、聴きやすいです。 【ピックアップ】01.Twilight Amaranthine なんとも壮大。悲観的になった魂を自然へと帰しているかのよう。諦観したまま消え入るようなラストがいい。 ■こんな人にオススメ ・自然が好き ・意欲的なバンドに惹かれる ■主な取り扱い店 ・GRAVE ■この音源に近いアプローチをとるバンド Mournful Congregation、Somnolent やりすぎなくらいのメロディックさを誇るバンドのDEMO音源再発盤 Loss『Life Without Hope...Death Without Reason』 ┃アメリカ(テネシー) ┃DEMO ┃ジャンル/フューネラル・ドゥーム ┃リリース/2005年 ┃レーベル/Deathgasm ┃マイスペース/http://www.myspace.com/lossdoom フルレングスが出そうででないアメリカのLossのDEMO。バンドの名前が直球なら、サウンドも直球。悲しみに満ちたメロディで音を彩っているのですが、まったく自重してないレベルのメロディックさで、スティックシュガーを5本入れたコーヒーのように甘ったるい。メロディアスな音楽が嫌いな人にとって、これは耐え切れないと思う。曲の展開もストレートであり、この手のバンドのクライマックス部分を全編に散りばめたようなアプローチが最初から最後まで続く。もはや捻ろうという意識さえ感じさせない。 フルが出たら出たで、絶対胃もたれするのだろうし、DEMOくらいの長さがちょうどいいかもしれない。Katatoniaのカバーが緩和剤になっているのはどうよ……。 【ピックアップ】02.Conceptual funeralism unto the final art (of being) ここまでいくと脅迫。泣くことを強要されているみたい。 ■こんな人にオススメ ・メロディックな音楽好きだ ・悲しみに満ちたメロディがあればいい ■主な取り扱い店 ・WEIRD TRUTH ・はるまげ堂 ・GRAVE ■この音源に近いアプローチをとるバンド Abyssmal Sorrow、Arcana Coelestia タイプの違う女性ヴォーカルが交差するウクライナのグループ Fleur『PRIKOSNOVENIE』 ┃ウクライナ ┃1stアルバム ┃ジャンル/フォーク・トラッド ┃リリース/2002年 ┃レーベル/Prikosnovenie 基本はフォークで、トラッドの土着性をスパイスにした曲が並ぶものの、チェロやフルートを使い、室内楽している部分があったり、プログレの影響を感じる静と動の使い分けが見られたり、相当数のジャンルを消化して創作しているのがわかります。そしてなにより、それらの要素を耳に残りやすく調理するポップのセンスが凄く、とても1stアルバムとは思えないほどアレンジ能力が洗練されている。 ヴォーカルは女性2人が担当していて、大人の落ち着きをイメージさせる声、妖艶でありつつ幼さもイメージさせる声と、それぞれタイプが違い、曲によってメインも変わる。ちょうど交互にメインヴォーカルが変わるので、単調さとは無縁。 多数のジャンル、タイプの違うヴォーカルによりサウンドにかなりの幅を与えていて、似たような曲がないにもかかわらず、すべて情感に訴えかけることに終始しているので、アルバムとおしての統一感はしっかり貫かれている。 先にも書きましたが、1stとは思えない驚異的な出来。 【ピックアップ】03.On the Dark Side of the Moon 月明かりの中、艶かしいダンスを踊るような妖しさあふれる曲。ヴォーカルもだけど、チェロも雰囲気作りにかなり貢献している。あと、この手の音楽にあって珍しくサビの耳残りが良い。 ■こんな人にオススメ ・女性ヴォーカルものが聴きたい ・自然大好き ■主な取り扱い店 ・AMAZON ・ザビエル・レコード ■この音源に近いアプローチをとるバンド Caprice、Mellow candle
神聖さの中にノスタルジックなムードが加わった3rdアルバム Ea『Au Ellai』 ┃ロシア? ┃3rdアルバム ┃ジャンル/ゴシック/フューネラル・ドゥーム ┃リリース/2010年 ┃レーベル/Solitude Productions ┃マイスペース/http://www.myspace.com/EaFuneralDoomMetal 前作からあまり間をあけずにリリースされたので、作品のクオリティに影響していないか心配でしたが、杞憂に終わりました。 ずいぶんと落ち着いた作風になっていて、前作のギンギンに張った気迫は抑え気味。というより元々やんわり聴かせることを目的にしているらしく、音圧も控えめになっている。それにともないメロディも増加。全編でまんべんなく聴くことができ、おまけにノスタルジックな味わいも出てきていて、相変わらず神秘体験しているようなイメージを与える音でありますが、どこか温かみも感じる。もともと、このジャンルにありながら暗黒要素の薄いアプローチをしていましたが、本作ではより淡い光が描き出されています。根暗人に対応した救いの音楽といった印象。聴いていくうちに捻じ曲がった黒い感情が解きほぐされて無くなっていく。 相変わらず曲の展開も上手く、細かいところまで手が入っていて切り替えしが良い。もはや安心のEaブランド。 トラックは3つ収録されてますが、それぞれ同じメロディが使われているので、実質アルバムとおして1曲かと。 【ピックアップ】03.Ea Taesse 冒頭のメロディからして涙腺を刺激してくると同時に、心の淀みが浄化されていくような感覚を覚える。 ■こんな人にオススメ ・根暗だけど前に進みたい ・シンフォニックなサウンドが好き ■主な取り扱い店 ・WEIRD TRUTH ・はるまげ堂 ・GRAVE ■この音源に近いアプローチをとるバンド The Howling Void、COLOSSEUM 神聖さが高まりすぎて、わけのわからないレベルに達した2ndアルバム Ea『II』 ┃ロシア? ┃2ndアルバム ┃ジャンル/ゴシック/フューネラル・ドゥーム ┃リリース/2009年 ┃レーベル/Solitude Productions ┃マイスペース/http://www.myspace.com/EaFuneralDoomMetal 前作が高い完成度だったため、本作は味のしなくなったガムみたいになるんだろうなと思っていたら甘かったです。 まず音圧からして違い、ズッシリくる重低音がまるで雷のよう。展開がどうこうよりも音そのものの迫力、そこから生まれる風格が伝わってきて、冒頭を聴いただけで本作に対する不安感が跡形もなく吹き飛んでしまいました。尋常でないオーラにはやくも傑作だと確信。 他に変わっている点は、より遅くなったことと、メロディが押さえ気味なこと。ドラムは前作に比べて、ツーバスの連打などの動的なプレイはせず、聴き手に対してスロウな印象を与えることに終始している。それに加えて、メロディの比重が減っているので、体感速度はさらに遅い。ともすれば、バンドによってはマイナスになりがちな変更点があるにもかかわらず、こうも中身が充実しているのは、前作同様、曲の展開のしかたが上手いからか。ゆったりな反復で攻めつつも、ダレそうなギリギリでシンフォニックさを差し込むなどをして、変更を入れるタイミングが絶妙。あと、中盤に鍾乳洞で佇んでいるようなアンビエントのパート、重低音メインで繰り出す、巨大な生物が身じろぎしているようなヘヴィなパートがあったりして、単にアイディアによるところも大きい。 そして、特筆すべきはクライマックス部分。ジワジワとテンションを上げていって、最大限に至ったときにエモーショナルなギターソロが割り込んでくる。予定調和だとわかりつつも鳥肌が止まらないです。 【ピックアップ】01.Untitled ヘヴィなギターがのしかかってきたときのインパクトたるや……。 ■こんな人にオススメ ・根暗だけど前に進みたい ・シンフォニックなサウンドが好き ■主な取り扱い店 ・WEIRD TRUTH ・はるまげ堂 ・GRAVE ■この音源に近いアプローチをとるバンド The Howling Void、COLOSSEUM Copyright © [ GARBOLOGY ] All Rights Reserved. http://garbology.en-grey.com/ |